高額療養費の給付について

支給手続の当事者と時期

自動払いによる現金給付(支給申請は不要)

当組合では現在運用中のシステムで自動払いのしくみを採用しているので、上記の通り本人申請が必要ありません。医療機関、支払基金から通常のタイミングで当組合に診療報酬請求がなされたら、受診した月から最短で3か月後に事業所の口座に振り込まれます。

現物給付に付随して発生する“広義の現金給付”

現金給付は自分で支給申請してはじめて支給されるものであり、他方、マイナ保険証等でかかる医療機関の診療費は通常、窓口で自己負担割合相当額を支払えば被保険者としての手続は完結します。現金給付に対応する言葉として現物給付といいます。高額療養費制度はその両者に関わるしくみであり、分かりづらい面がありますが、被保険者に正しく理解してもらわないと不利益を被りかねない重要な給付の制度です。事業所社会保険担当が手続に直接関わることはないとしても照会の多い事柄と思われるので知っておいてください。

発生から支給までのプロセス

ひと月に当組合に請求される全てのレセプトから過誤請求をふるいに掛け、医療機関に本来支払うべき対象とその金額が確定します。高額療養費の計算はその作業と並行しておこないます。給付全体が確定しなければ高額療養費も確定しません。被保険者が窓口負担した診療費の領収証を基に高額療養費の支給申請をしたとしても、正しく算定するのは困難な場合もあり、気付かない場合は大いに起こりえます。その両方のニーズから高額療養費は自動計算・自動払いとしました。法改正により合算対象レセプトは増加するのでますます自動払のしくみが要請されます。被保険者は申請する代わりに毎月発行されている「給付金のお知らせ」(保険給付金支給決定通知書)を確認してください。決定通知を受け、その1週間後(毎月15日頃)には事業所へ給付金が振り込まれる仕組みです。

発生から支給までのプロセス図

高額療養費のしくみ

一部負担のしくみと高額療養費給付のニーズ

一部負担が著しく高額となったとき療養の給付などの支給を受けた方に対し高額療養費を支給します。支給要件、支給額などは以下の通りに定められています。

支給要件

ひと月にかかった医療費の自己負担額がレセプト(診療報酬請求書)1件で自己負担限度額を超えたとき、その差額を高額療養費として支給します。原則として被保険者が受診者なら「本人高額療養費」、被扶養者なら「家族高額療養費」といいます。レセプト1件とは医療機関からの請求単位毎にという意味で、例えば、同じ病院でも医科外来と医科入院は別々に、n月からn+1月にかけての入院ならn月分とn+1月分は別々にレセプトが作成されます。療養費(例えば装具代)ならレセプト1件の代わりに療養費支給申請1件(但し単月の支出)が相当します。また、長期・高額の療養が続く場合は支給要件を緩和し、家計への影響を抑制します。言い換えれば自己負担限度額の引き下げと現物給付化などで対応します。また、例外としては1件だけでなく同月診療に限り一定額を超える複数のレセプトを合算し支給します「合算高額療養費」は組み合わせの態様も複雑化してきています。具体的な金額や現金と現物の違い、組み合わせについては後述をご覧ください。

受給権者

被保険者(任継含む)。
[家族が療養の対象であっても保険給付の対象者は被保険者です。]

対象となる給付の種類

  • 療養給付費、家族療養費(保険点数部分のみで食事療養費は含まない)
  • 保険外併用療養費[保険給付と自費診療の混合]
    (保険点数部分のみで食事療養費は含まない)
  • 療養費(上記現物給付が出来ず、全額立替えたとき。装具代も同様。)
  • 訪問看護療養費、家族訪問看護療養費

これらの自己負担額が単独で又は合算で自己負担限度額を超えると支給します。

高額療養費の現物給付化

更正医療、育成医療など公費助成の受けられる療養、透析治療など長期に亘る療養が必要な場合には医療機関が窓口で患者には自己負担限度額までしか請求せず、高額療養費相当分を支払基金経由で保険者に請求する仕組みを採ります。自己負担分を公費と最終的な自己負担に分け、最終的な負担を軽減し窓口での立替額を軽減します。

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自己負担限度額

医療費の自己負担限度額(1ヵ月当たり)

<70歳未満の人>

  月単位の上限額
標準報酬月額83万円以上 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
[140,100円]
標準報酬月額53万円以上83万円未満 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
[93,000円]
標準報酬月額28万円以上53万円未満 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
[44,400円]
標準報酬月額28万円未満 57,600円
[44,400円]
低所得者
(住民税非課税世帯)
35,400円
[24,600円]

[ ]内の額は4回目以降の限度額。

<70~74歳の人>

適用区分 月単位の上限額
外来
(個人ごと)
外来+入院
(世帯ごと)
現役並み
所得者

現役並みIII
標準報酬月額
83万円以上

252,600円

(総医療費-842,000円)×1%
[140,100円]

現役並みII
標準報酬月額
53万円以上83万円未満

167,400円

(総医療費-558,000円)×1%
[93,000円]

現役並みI
標準報酬月額
28万円以上53万円未満

80,100円

(総医療費-267,000円)×1%
[44,400円]
一般 標準報酬月額
28万円未満
18,000円
(年間上限144,000円)
57,600円
[44,400円]
低所得者
(住民税非課税)
II 8,000円 24,600円
I
(年金収入80万円以下等)
15,000円

[ ]内の額は過去12か月以内の4回目以降の限度額。

「現役並み所得者」とは標準報酬月額28万円以上の方とその被扶養者。ただし収入額による再判定を行い、70歳以上の被扶養者がいない方で年収額383万円未満の場合、70歳以上の被扶養者・旧被扶養者(後期高齢者医療制度の被保険者となったことにより被扶養者でなくなった方。被扶養者でなくなった日の属する月以後5年を経過するまでの間に限る)がいる方で合計年収額520万円未満の場合は、申請により「一般」区分になります。

適用区分「現役並みI・II」に該当される方は、マイナ保険証を提示することで窓口での支払いを上表の自己負担限度額に留めることができます。マイナ保険証がない方は「限度額適用認定証」が必要です。「限度額適用認定証」は当組合までお問い合わせください。

特定疾病

特定の疾病治療に対して受療証を交付します。窓口に提示することにより該当する医療費について窓口負担額を1万円(人工透析治療を行う必要のある慢性腎不全で標準報酬月額53万円以上の方は2万円)にまで引き下げ、かつそれが自己負限度額となるような現物高額療養費を給付します。医療機関が1万円を越える部分(人工透析治療を行う必要のある慢性腎不全で標準報酬月額53万円以上の方は2万円)すべてを支払基金経由で保険者に請求するので、高額療養費の給付は現物で完結しています。したがって事後的に現金給付する必要がありません。具体的な疾病名称や手続方法については「特定疾病療養」の項をご覧ください。

世帯合算

同一の月に行われた療養のうち若年については自己負担額が21,000円以上のレセプトについて、高齢受給者は全てのレセプトなどを対象に自己負担額を合算し、この合算額から自己負担限度額を超える部分を合算高額療養費として支給します。(自己負担限度額は件数によらず一定額です。個々のレセプト毎に高額療養費を計算するのではなく、一定の範囲内で自己負担額の合計から上記一定額を控除するのが基本です。その「一定範囲」は以下[2]の通りです。)

合算のポイント

[1]同一診療月のレセプトなどであること。

[2]世帯合算という名称ですが、世帯内の複数人のレセプトなどであっても同一人の複数レセプトなどであっても支給可能です。世帯内で老健該当を除く一般の加入者すべての方が対象となります。合算の括り方は高齢受給者のいない世帯は従来通り21,000円以上のレセプトなどを上記の方法で一括して計算しますが、高齢受給者のいる世帯では複数の括りで計算を併行して、その計算結果が一番被保険者に有利な金額(条件付の積算)をその月の高額療養費支給額として決定しています。